今日は猫の「肥大型心筋症」についてです。
(photo by roxeteer)
【特徴】
肥大型心筋症は猫の心筋症の中で最も発生が多いタイプの心筋症です。
左心室が求心性に(つまり内側に向かって)肥大することで、左心室の中が狭くなっていき、
それに伴い血液の渋滞が起こり、うっ血性心不全の病態を呈するようになります。
発生には遺伝子異常の関与がさまざま報告されていますが、詳細は不明な状況です。
メインクーン・アメリカンショートヘアー・ペルシャ・ラグドールなどに好発すると言われていますが、
実際のところはどの猫種にも起こると思われます。
平均発症年齢は4.8歳~7歳で雄に発生が多いです。
【診断】
僕がもっともここで強調したいことはこの「診断」の部分です。
教科書的に言えば、
レントゲン、胸部エコー、血液検査、血圧測定などから総合的に診断する。
この1文で終わりなのですが。。
重要なことはいかにして無徴候な状態の肥大型心筋症の猫ちゃんを見つけてあげられるのかということです。
肥大型心筋症は初期の段階で症状が出ることはほとんどなく、
開口呼吸や呼吸困難、後肢麻痺(血栓症)などの症状が出たときにはすでに重篤な状態であることが多く、
診断がついても救命できないパターンも多々あります。
犬の様々な心疾患と大きく異なるのは猫の肥大型心筋症の場合、
・心雑音がでないことが多く、身体検査のみでこれに気付くことはほぼ不可能であること。
・またレントゲン検査も感度が悪く、よほど進行した状態でないと診断がつかないこと。
が挙げられます。
ですので、例えば、
「うちの猫ちゃんは毎年、動物病院に行ってワクチンも打ってもらってるし、
身体検査もしてもらってるから安心☆彡」とは言えないのです。。
かといって何も症状がない猫ちゃん達全頭に心臓の超音波検査を勧めたとして、
果たしてどの程度受け入れられるのか、はなはだ疑問です。
獣医師が昨今の猫ブームのなか、猫ちゃんの飼い主様達に、啓発していかなければいけないのは
こういった病気があるということと、ねこちゃんのわずかな変化を見逃さないようにしていただくこと。
心臓に関しては、聴診やレントゲンだけでわかることは非常に少ないということを知って頂くことかと思います。
【治療】
残念ながら根本的な原因を治す治療法はなく、
飲み薬による内科的な治療法になります。
内服薬で、病気の進行を遅らせ心不全症状が出るまでの時間を延ばしたり、
病気の進行具合によっては、血栓が出来やすくなるので、血栓の予防薬を使用します。
重篤な症状が出てから治療しても、効果が限定的で早期に亡くなっています例も多いため、
先ほど書いたようにいかに早い段階で発見できるかがポイントです。
メインクーン・ラグドール・アメショー・ペルシャなどの好発とされる猫ちゃんたちはもちろん、
そうでない猫ちゃんでも定期的に病院を受診し、健康チェックを受けていただくことが重要だと思います。
特に血液検査だけではわからないことが多い病気ですので総合的なチェックを心がけて頂きたいと思います(>_<)
浜松市中区 レイクサイド動物病院
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